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Wandering boy


校舎を出て傘を開こうとしたら、向こうの端に見慣れた細長い人。
ぼんやり雨を見ている。
傘らしきものは手に持っていない。
心拍数が上がるのを感じた。
そして目が合う、なんてタイミング。


 今帰り?


頬のほてりが自分でもわかる、ばれませんように


 先輩も

 んー、俺は並木道を通ろうかと思って

 並木道?

 ケヤキの、裏の

 それなら、帰り道ですけど……

 ほう、それは


先輩は電車通学のはずだから反対方向だ。
その先のショッピングモールにでも行くのかもしれない。
書店も入ってる、もしかしたらその先の古本屋に……。
気がつけば先輩は紺色の傘を見てにこにこにこにこ。
少しにこにこし過ぎなんじゃないだろうか。


 俺が持とう


しとしと雨が降る中。
ケヤキの並木道を二人で歩いた。
あまり何も話さなかった。



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