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break heart



気づいたのはいつだろう、
あの子がこいつを見ていることに。



 こないだ泣かれました

 何だと

 だから怖いって


彼がいなくなり、
彼の弟の似ている部分を通して彼を見つめた。
彼の弟の似てない部分をさがして彼を見つめた。



 君とつきあってるという噂を聞いたらしいです

 誰だそんなこと言うのは

 苦しい



思わずにぎりしめた襟首を離そうとしたが、これだけは聞いておかねば、



 否定したんだろうね

 肯定する理由がございません



手を離せば深呼吸などしている。
大袈裟なんじゃないか、



 本気なんでしょうね



泣くのかと思った。
一瞬だけど、



色素の薄い髪と瞳、
痛いくらい白い肌、

ただ見ているだけだった。
それだけでよかったから、

自分のようだと思った。
違うのはこいつが、
あの子に気づいたこと。
聞くまでもなかったか。



 まあ、ご想像にお任せします



やはり私の手の方が痛いと思うのだが頭を抱えたりしている。
窓の外のケヤキの緑がやけに瑞々しい。



時折二人で歩くのを見かける。
二人の距離にあの子へのやつの気遣いを感じる。



彼がいなくなり、
彼の弟を通して彼を見ていた。
それは彼の弟のことも見ていたことなのだと気づく。
認めるのは遺憾だが多少の喪失感を覚えていることは否定できない。



break heart
end.
 


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