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my fair sister



振り返れば右手にハサミらしき物体を持ったクラスの女子一名。


 出たな! 宇宙ガニ!


のたまえば、カニカニ言いながら左右に平行移動。

のりやすい性格なのだ。

宇宙ガニは茎のぬめりをとり流水の中で切り口から離れたところを切る。ハサミの音がきらりと響く。
俺はガラスの花器を洗う。



椅子に肘をついて、いくらか生彩を取り戻した菊とがらんどうの机の中のマンガを見る。
俺は右、宇宙ガニは左。
床は冷たい。



 ほう、妹さんが


俺は宇宙ガニの黒い長い髪やちょこんとした唇などたまに夢見る。
俺の繊細な恋心を唯一知ってるやつは机にお花が飾られていたりする。
そして俺の妹に恋されていたりする。



 恋文とは、限らん、中味見たのか

 そ、そんなことできませぬ

 なぜ泣くか

 恋でないのに手紙を書くか

 宇宙ガニにはわからない




ガラスに二人の顔が妙な案配にのびてうつる。


my fair sister
end.



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