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a girl



 何だかやたらと買っていったな

 かたがついたんだろう

 そんな感じの買いっぷりだったな



黒髪の水色のワンピースの女性が立っている。
白い細い首、少女の影は色こいが。
隣に背の高い眼鏡の優男。
ずいぶんまっすぐ見つめるものだ。


 エリナー・ファージョンのりんご畑のマーティン・ピピンお買い上げ

 おまえ、読んだことあるか

 ない



優男は子供の頃読んでいたと言っていた。
店を出る時、男が少女だった女性の髪の端を軽くひっぱっていた。
みつあみを惜しむかのように。
古本屋の美青年が太刀打ちできないのも当然である。


 おまえも読むといい

 はあ

 おまえだってマーティン・ピピンになれるかもしれないのだから

 なんだそれ



私はなれなかったが。







 さようなら、茜さす少女

 いらっしゃい、あなたはすてきな女性になるだろう

 ひそかに惜しむは一人立つ少女の残像



a girl
end.



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