a girl
そこには少女が一人立っていた
みつあみ
白い細い首
赤い頬
やわらかくかたい少女が一人立っていた
レジでバイトが応対している。この青年、年頃の娘の心をつかむ容姿を無駄に持っている。
かび臭い古本屋に若い女性が買いたいものは何か。
きっちり編まれたみつあみが店から出ていく。
今のみつあみ、何買ったんだ
井上靖の額田女王
茜さす紫野ゆき標野ゆき……おまえの方は目もくれなかったな
普通そうでしょう
私の店ではちょっと普通ではない。
茜さすみつあみを野守のように見ていたが、
……本が好きなんだな
普通そうでしょう
あの制服、おまえの後輩ではないか
変態じじいと思われるよ
なんの、今や茜さすみつあみとは店の奥に陣取る私と目が合えばえしゃくをする仲なのだ。春先のことである。
学校帰りに立ち寄る。制服も真新しい。娘くらいの年頃の少女だ。変態ではないゆえに日常の風景として埋没する。
過去、私の側にひと時いた少女のような女性を時折思い出すくらいで。
悪夢のように。
悪夢はすてきだ。